2016 年 12 月 5 日 月曜日

外壁調査【構造物の調査・診断】

<<外壁調査は何故、必要なのでしょうか>>
タイル張りやモルタル施工した外壁仕上げ材(外壁材)は、竣工から
しばらく経つと仕上げ材部の接着モルタルなどの経年劣化により剥離が
生じることが多くなります。
この状態を放置すると、やがて剥落してしまいます。
外壁材の剥落は、建物の高所から硬い物体が落下し通行人に当り人命を脅かすなどの
第三者障害やその損害賠償建物の美観が損なわれ建物の不動産価値が低下するなど
居住者の財産にも影響を及ぼす
ことがあります。

タイル張りといっても、その施工方法の違いによりタイルの剥離・剥落の仕方は
異なります。

では<<何故、外壁が剥離するのでしょうか>>
タイル後張り工法の外壁は、タイル・モルタル・コンクリート躯体で積層構造をしており、
これらの材料が外部からの温度・湿度変化を受けることで材料の膨張係数の違いにより
それぞれに異なった伸縮性が生じます。この動きをデファレンシャルムーブメントと
呼び、外部の環境変化によって材料間にひずみが蓄積し、剥離が生じます。

外部の温度変化が壁内部に伝わる時に、外壁材のデファレンシャルムーブメントは
熱の減衰と伝導による温度差からも影響を受けます。外壁材は外気温上昇時には
モルタル仕上げ側に伸びが生じ、外気温低下時には仕上げ材側が収縮します。
この反りの繰り返しにより、コンクリート基盤からモルタル仕上げ材が剥離しやすい
状況を生じさせます。

タイル張り外壁は、先付け工法・乾式工法の場合を除き、下地のコンクリート壁または
その上の下地モルタル(コンクリート打ち放し工法の場合は下地モルタルはありません)に
張付けモルタルを用いてタイルを張り付けていくので、コンクリート壁・下地モルタル層及び
タイルの各材料が層を形成し、それぞれの層の間に少なくとも三つの境界面(タイルと
張付けモルタル、張付けモルタルと下地モルタル、下地モルタルとコンクリート壁基盤)が
存在します。
この境界面で外壁タイルが浮いて剥離します。
第三者障害の問題もあるので、特定の建物の所有者や管理者は、予防保全の観点から
維持修繕計画を策定し、定期的な外壁診断を実施する必要があります。